陣痛室に入ったのは、朝の7時過ぎ。
本格的な陣痛が始まっていて、
妻は呼吸を整えながら、痛みの波をやりすごしていた。
それをただ隣で見守るしかない僕。
新米パパとして、初めての立ち会い出産に緊張しっぱなしだった。
最初は腰をさすったり、水を差し出したり。
それだけじゃ足りないときは、
妻に言われてお尻を拳でぐっと押してサポート。
自然と中腰の体勢になっていたから、
だんだん自分の足もプルプルしはじめた。
このとき思った。
「テニスボールを持っておくといいって聞いたの、ホントだったんだな」って。
拳だと自分もキツいし、長時間は正直かなりしんどい。
もし次があったら、絶対テニスボール持参しようと思った。
「もうすぐ会えるよ」と声をかけると、妻は小さくうなずいた。
でも、痛みが強くなってくると、
下手な声かけは逆に負担になる気がして、何も言えなくなった。
この時間がどれくらい続いたのか、
正直、もうよく覚えていない。
途中、ふと気づいた。
そういえば僕も妻も、朝から何も食べていなかった。
でも、不思議と空腹は感じなかった。
それどころじゃない。
ひたすら目の前のことに必死だった。
⭕️陣痛室でできたこと
妻の腰をさする
お尻を拳でぐっと押す
水分補給をサポート
陣痛アプリで間隔をチェック
呼吸を合わせて落ち着かせる
❌陣痛室でできなかったこと
かける言葉が見つからなかった
中腰できつかったけど言い出せなかった
痛みに耐える妻に、何もできない無力感を感じた
陣痛室で過ごすこと、約4時間。
11時30分を過ぎたころ、
「そろそろ分娩室へ移動しましょう」と助産師さんに声をかけられた。
妻は自分の足でゆっくり歩いて分娩室へ。
その後ろを、僕も必死についていった。
分娩室に入ってからも、妻はひたすら痛みに耐えていた。
でも、昨晩からほとんど寝れていなかった妻は、
すでに体力の限界が近かった。
最後のほうは、陣痛の間隔があいてきて、痛みも弱くなってきた。
助産師さんが「促進剤を使いましょう」と言って、
最後の最後だけ、促進剤を使って出産をサポートすることに。
途中、
「赤ちゃん、見ますか?」
と助産師さんが声をかけてくれた。
促されて妻の側へ回り込むと、
赤ちゃんの頭が少しだけ見えていた。
驚いたのは、髪の毛がふさふさだったこと。
ほんの少ししか見えてないのに、
しっかり黒い髪が生えていて、
思わず「髪、多い!」って心の中でつぶやいた。
⭕️分娩室でできたこと
妻の手をぎゅっと握る
タイミングを合わせて声をかける
産まれた瞬間をしっかり目に焼き付ける
妻に「ありがとう」と心から伝える
❌分娩室でできなかったこと
カメラのことを完全に忘れていた
緊張しすぎて手汗がすごかった
どんな言葉をかけていいかわからず、ただ「大丈夫」と繰り返していた
そして13時40分ごろ。
赤ちゃんの産声が、分娩室に響いた。
その瞬間のことは、きっと一生忘れない。
小さな手、小さな顔。
泣いているのに、どこか安心したような気持ちになった。
出産に立ち会って思ったこと。
「何かしてあげたい」と焦る気持ちはもちろんあったけど、
結局、そばにいることが一番大事だった。
完璧じゃなくてもいい。
ただ、妻の隣にいて、
一緒に乗り越えることができたこと。
それだけで十分だったと思う。
この出産体験談を通して、改めて感じた。
出産のリアルは、想像よりずっと過酷で、でもそれ以上に感動的だった。
そして、立ち会い出産は、僕にとってかけがえのない経験になった。